COUPE De AACA 1-4


とうとうこの日がやってきた!
この日の準備に9ケ月を費やした。
そう準備期間に270日一切自転車に乗らないで自分をありのままの姿に戻す!!
それはまさに己との戦い。その瞬間瞬間の自分との対話を楽しむ神聖な行為。
今ある能力全てを総動員しレースに挑む究極のゲーム!!!

僕は激しく今日までの自分を呪った。



レース参加を決意したのがスタートの24時間前。
僕はシューズとヘルメットを探し、自転車を学生に手配した。

サプライヤーであるガノーの自転車に乗ることは選択肢から外れない。
普段学生に貸しているスペアバイク(けして部品取り車じゃない!☜ココ重要)にとうとうまたがる日が来たのだ。


少し前ならレースの準備なんてルーティーンに従えばなんてことなかったのだけど、しばらく離れていたので何から準備していいやらわからない。
新鮮な気持ちで準備を整え、またその時間を楽しむことができた。

当日会場で満面の笑みを浮かべる中井からレーサーを受け取る。
とりあえずDI-2は初めてなので、慣れておこうとまたがるが、バッテリーが充電できていない。
『僕のバッテリーがあります!』と含み笑いの須堯が自分のバッテリーを差し出してくれた。

当日エントリーをすまし、スタート地点でその時を待つ。
既に多くの選手達がわれ先とスタートライン付近に集結している。

僕はその集団を見て思った
『どいつが今日首まで詰め込んできているんだ?飛んでいるのは誰だ?彼か?それともその隣の彼がノットノーマルなのか?』

久々のこの空気に僕も緊張してきた。


PHOTO:Yukimi Kubota


緊張感に耐え切れず僕も自転車にまたがると、先ほど動いてくれたディレイラーがまたしても動かない。
どうやら配線のどこかがショートしているらしい。
(そうなると瞬間でバッテリーが放電してしまうと)

親切な方からバッテリーを一時的にお借りし、ギアを50×17に固定して出走の決意を固めた。

カテゴリー4ならそうスピードも上がらないだろうと思い、楽観視しスタートラインに並ぶ。


レースは4周の20km。
前に行けば立ち上がりが楽なのはわかっているが、集団の中に落車の臭いが充満していて上がるのが怖い。
しばらく我慢すればその臭いは消えて無くなると思っていたが、それは最後まで消えることなく、むしろラストの1000mではその臭いはより鮮明なものになっていった。

コーナーからの立ち上がりが速い!間違ってパリ・ルーベにでもエントリーしてしまったのか、それともやはり周りの選手たち全てがビャルヌリースなのか、僕はひたすら我慢に我慢を重ねた。
苦しさに負けてペダリングを止めることは個人の選択。
足を止めたいんじゃないのか?
まだまだ苦しみたりないのか?
もう十分に苦しんだじゃないか!
もともと無理があったんだよ!
自分の正直な部分と会話する。しかしこれこそが今日求めていたモノであった。僕はその苦しさを楽しんだ。

それはそうと新しいガノーのフレームは立ち上がりの反応がいい。
これがなければいかにニュータイプの自分でもすぐに遅れていたに違いない。フレームの性能に感謝した瞬間だった。

スタートゴール地点を通過するときくらいはフォームを固めないと、熱烈なサポート部隊に笑われてしまう。
僕は無理やりにでもリラックスしているポーズをとり、また彼らが僕の状態を見ていてくれているか確認しながら通過した。
『よしよし、見ていやがるな!最後は一発決めてやるか!』
そんな思いでやがて来る最後の時まで自分を奮い立たせた。
しかし、体は思っていたよりはるかに正直で、脚の筋肉はすでに油粘土に変異したようで言うことを聞かなくなってしまい、最後の1kmでは前の選手を1人抜いたダメージで最後尾まで下がってしまう始末。

それでも気持ちだけは!!
と思った瞬間、さっきまで苦しそうにあえいでいた全てのライバル達が一斉に最後の加速を始めた。
スピードメーターはついていなかったが、体感速度でいえば80km/hくらいか。
『くっ!!こいつらやはりやっていやがる!!』
動いてくれない自分の体とのギャップに心は折れ、僕の残りのレースは敗走に一変した。

そうなると最後の小さな丘も、まるでユイの坂のようにそそり立ってくる。
このときはじめて『充電確認くらいしておけよ!!』と固定ギアを恨んだ。


PHOTO:Yukimi Kubota


ゴールで待つサポート部隊の声が温かい。
一線で走っていた頃なら、誰も口をきいてくれなくなるような走りなのに。
それは本当に嬉しかった。
自転車本来の楽しみが確かにそこにあった。

ギスギスした世界も好きだったけれど、こういうのもいいなと心から思えた。

周囲に一通りレースの言い訳をすまし、今日の大したことない自分を精一杯褒めた。
汗を拭き服を着替え、レースを待つ選手たちの緊張感にあふれた表情を見ながら食べるマネージャー手作りのお弁当のなんと美味しいことか。



空腹を癒し、カテゴリー1に出場する選手達の観戦。
トップライダー達のパフォーマンスに感嘆の声を上げ、またあんなふうに走ってみたいななどと少し感傷的にもなり、
それでも今の自転車との付き合い方も悪くないななんて思いながら岐路につきました。





PHOTO:Yukimi Kubota


久しぶりのレースは天候にも恵まれ、また久しぶりに会う知人たちの温かい笑顔のおかげで、本当に楽しい記憶となって僕を楽しませてくれました。
手作り感のあるこの温かなレースでより多くの人達が自転車と触れ合い競技の普及につながればいいと思うし、またより大きなイベントに発展し将来世界選手権を走るような選手のステップになって欲しいとも思いました。

最後になりましたが、参加するにあたり協力して頂いた方々、多くの声援や写真を撮って頂いた方々、久しぶりに会う自分に笑顔を投げかけてくれた方々全てに感謝します(*^。^*)




選手:秋田