いまさらながらの 2 Days Race in 木祖村レポート

2年ぶりに木祖村に行ってきました。




以前はこの地方に来ると現役の頃の練習を思い出したものだが、今回は行きの車の中でもコースについてからも、思い出すのは2年前の木守が優勝した学生選手権のことばかりだった。

午前中に行われたタイムトライアルでは木村が4位に入賞し、新人賞ジャージを手に入れた。
本人もこの手のジャージを手に入れるのは初めてで、午後のレースでそれを着て走ることはそれなりに嬉しそうだった。

この大会はホビーレーサーにステージレースを体感してもらおうというような趣旨もあるため、参加者のほとんどはホビーレーサが占めている。
そして他の大会で上位入賞経験のある選手は参加資格を剥奪されている。

そのため、大会全体のレベルはそう高くはない。
これは誰もが認知していることで、京都産業大学の選手にも高すぎず低すぎない、丁度良いレベルのレースだと思えた。

彼らにはこのレベルのレースでつまづいていては、続く学生のレースでうまく走れるはずはないと言い聞かせた。
しかし、内心は高岡選手をはじめとするフルタイムで働くホビレーサーに一蹴され、心を入れ替えこの先の練習の質の向上につながっていくことも望んでいた。
彼らのフィジカル・タクティスそしてメンタルからは多くのものを学ぶことができる。

しかし、実際は京産大が終始レースを支配し、見事ワンツーフィニッシュ。ポイント賞まで持って帰ってきてしまい、
これ以上ない出来栄えで初日を終えた。

この夜のチームの雰囲気を表現するなら 『いつかは自分も』 だったと思う。


二日目、レース前には予報どおりの雨が降ってきた。

昨日完走できずに残念なほうのレースにエントリーの南野。この日も登坂に苦しむ。
早く自転車のペダリングのトリックに気づいてほしい。多くの優秀な選手はこれに気づき、すぐさま階段を駆け上がっていく。

吉岡のリーダーを守るにあたって最大のライバルは1分差にいる昨日のタイムトライアルで優勝した高岡選手だ。
しかし、降り続く大雨に、今日は彼の日でないことは容易に想像でした。
2連覇のかかった青森での雨のインカレロード。彼が現役最後のレースに挑んで寒さにやられたことを私は今でも覚えている。

人間の体質などそう簡単に変わるものではない。

昨日のレース内容から力で逆転されるようなタイムを失うとは考えにくかった。
ハンガーノックやパンク、落車が次々に襲い掛かってチームが崩壊することは考えられたが、力で負けることはあまり心配していなかった。
それでも早くから主導権を握りすぎないよう注意はしておいた。


序盤は服部と鍵本で対応。中盤からは木村。後半は吉岡自ら動くプラン。
実際、そのように彼らは忠実に作業をこなしてくれた。
心残りは服部の脱落と鍵本のジャージを失ったこと。
もう少しチームで協力してやれれば失うことは無かったかもしれない。
こればかりはリーダーチームの宿命か、私自身も鍵本が一人でこなさないといけないとばかり思い込んでいた。
もう少しチームで協力してやれればよかった。

中盤を過ぎた頃、多くのライバルと目される選手たちがアクシデントでレースを去っていた。
特に岩井商会の小島選手は次の動きを作ってくるややこしい選手だと警戒していた。

残り6周。6人程度の逃げが決まる。
集団とは30秒。引いているのは京産大
各賞ジャージが先頭で回している。

外からみると木村がつらそうに見えた。さらに思うように前を捉えられておらず。バーチャルで木村の2位まで逆転された。
危惧すべきはこの逃げではなく、この逃げを捕まえた後のカウンターアタック

なので全力でこの逃げを捕まえてはいけない。余力を持って射程距離に持っていかないといけない。
しかし、先頭2名の安井選手と西川選手も逆転を狙った走りであり、余力を残して何とかなるものでもない。


このときばかりは、他のチームにも前を引かせるようにいったん追走を放棄するか、他のチームに助けを求めるかするべきじゃないかと監督としての指示を出そうとしたが、彼らがリーダーチームとしての責任を果たそうと頑張っているのをみてそれはすべきでないと思えた。
選手たちには失礼だが、リーダーチームの責任からくる崩壊、滅びの美学を受け入れる心の準備までした。

残り2周で前の二人が分解した。勝負の時間が訪れた。
順調に差を詰め、木村が残り1周にはいる登りで加速。
先頭の安井選手と昨年までプロの島田選手と共に集団から抜け出していった。

ここには吉岡も入っていてほしかった。

最後の三人の勝負、スプリント賞で散々出し尽くした島田選手にまだ一発があるとは思えなかったが、ここまで追走していた木村も消耗しているに違いなく、まだチームの勝利を確信できなかった。
しかし、総合優勝だけはゆるぎないものになっていた。

最後は木村が他の二人を振り切って優勝。2位に島田選手。ここまでよく逃げていた安井選手が3位に残った。

吉岡も20秒遅れてゴール。

まるでB級映画のような安い完成されすぎたシナリオに思えた。

後に木村に聞くと、『前を追いかけるのは自分の逆転のチャンスをなくしてしまわないためで、なんとか吉岡を逆転しようと最後勝負にでた』と。
なんと素晴らしい。他の選手の為に力を使わなければいけない状況で自分の成績まで意識できるとは。しかも逆転って…。

最期まで逆転に望みをつなぎ正々堂々と挑んできた安井選手と西川選手に賞賛を贈りたいと思う。
そして彼らの挑戦を真正面から受け止め退けた我がチームの選手達も誇らしく思えた。



反省点
監督会議に出席せず、大会運営を妨げた。やはりこのあたりはもっと徹底していかなければならない。
表彰式にも遅刻し、大会運営を妨げた。 展開から上位に入ることが決定的であったのだから、表彰式用のウェアはゴール前にスタッフの我々が準備しておくべきであった。


監督 秋田